
の一部が倒壊したり、書類が散乱する市庁舎において、半減した戦力で山のような仕事に直面することになった。 また、実際に救出活動や消火活動にあたる讐察、消防でも地震のため多くの障害が発生してしまった。たとえば兵庫県警は、本来ポートアイランドにある港島庁舎に災害対策本部を置くことになっていた。しかし、液状化の被害がひどくて設置できず、急きょ生田庁舎に本部を設けることにしたが、災害対策用の電話回線の設置などにとまどったというし、神戸市消防局でも、ポートアイランドに設置してあった高所監視カメラが地震の振動によって作動せず、ヘリコプターで状況を把握しようとしたが、ヘリポートまでの道路が寸断されたため、ようやく9時20分に歩いて到達するありさまだったという。このヘリコプターからの情報が決め手となって神戸市長は、他の自治体の応援要請に踏み切ることになった。 要するに、地震対策にあたるべき機関もまた甚大な被害を受けてしまったのである。筆者の知るかぎり、現在の市町村地域防災計画の多くは、災害が起こったとき自治体・警察・消防・病院などの機関、あるいは道路・鉄道といった施設が災害によって大きな披害を受けるとは想定されていない。多少の制約があっても機能できるとみなされており、初動態勢に決定的な影響を与えるほど防災機関がダメージを受けるのは想定の外にあった。そのため、神戸市の場合も初動態勢が決定的に遅れたわけだが、もう一つ、災害の初期段階で被害の全貌が的確に把握できなかったということも、震災の被害を増幅した要因になっている。被害状況の把握こそ災害対策の基本であり、災害の被害がどのくらい大きいか、あるいはどこにどのくらいの被害が出ているかをおおまかにでも迅速に把握することが重要であり、そのためには、災害情報を収集し、避難の勧告・指示など必要な情報を住民に伝達するためのメディアを事前に備えていることが必要になる。さらに付け加えれば、今回のように停電が長期間続くような災害では、自家発電装置やバッテリーなどの電源間題が重要になる。そうした配慮もまた不可欠であろう。その点で、被災地域はどうだったろうか。 (3) 防災行政無線の問題点 東京都や静岡県など、以前から巨大地震の発生が懸念されている地域では、災害情報の収集・伝達用のメディアがかなり整傭されているが、残念ながら兵庫県の市町村はそうでなかった。たとえば甚大な被害を受けた神戸市、西宮市、芦屋市、尼崎市、宝塚市のうち、被害情報の収集用に使われる移動系の防災行政無線をもっていたのは神戸市、尼崎市、宝塚市、住民への広報に使われる固定系の防災行政無線(同報無線)があったのは尼崎市だけという状況だった。しかも、尼崎市の同報無線(拡声子局)は今回の災害では当初一回も使用されておらず、各市の移動系無線もあまり有効に使われていなかったようである。
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